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 第四章 高度産業社会への胎動
   第二節 地域振興と県民生活
    三 商工振興と工場誘致
      県経済界の動き
 ところでこの時期には、開発計画、商工振興などの県の諸施策を後押しするにとどまらず、むしろ積極的に政策提言を行う県経済界の組織的な動きが現われた。
 まず、一九五三年(昭和二八)四月、福井県経済全般についての資料の収集・作成・準備と総合的な調査・研究を目的として、福井経済調査協会が設立された。発起人には官学民の主要人物が名を連ね、まさに産業振興へ乗り出さんとする県の総力を挙げた調査機関の設立であった。顧問に小幡知事、市橋保治郎福井銀行頭取のほか稲葉秀三国民経済研究協会理事長を迎え、理事長には藤井利一福井新聞社主筆、事務局長には長谷川直樹が就任した。福井経済調査協会は、月刊誌『福井経済』を刊行するとともに、景気動向資料などの会員向け速報の発行、県経済に関する各種学術図書の発行、行政機関等の委嘱による調査研究、定例研究会・講演会の実施など、各種経済情報の調査・整備・普及活動におおいに貢献した。
 五五年一一月には、福井経済同友会が設立された。経済同友会は、四六年四月に大企業および中堅企業の経営者の個人加入形式による同志的結合を目的として創立された経済団体であるが、五五年九月の郷司浩平常任幹事の来県を機に、北陸三県で最初の同友会の地方組織が誕生した。前田栄雄(福井県繊維協会会長)・西出志郎(京福電鉄専務取締役)・黒川誠一(福井精練加工取締役)・酒井伊四男(酒伊繊維工業副社長)・福島文右衛門(福井鉄道副社長)・藤井利一が発起人となり、代表発起人の前田が代表幹事に就任した。福井経済同友会は、経済調査協会と連携して経済動向の分析を行い、県の予算編成、中小企業問題、生産性向上運動などに数々の提言を行うとともに、例会や各種委員会に知事や県の幹部らを招いて頻繁に意見交換を行うなど、まさに県の施策を方向づける県経済界の中枢としての役割を担った。また、五七年七月には、福井県商工経営研究協会を改組して、中小企業の生産性向上を目的とする福井県生産性協会が発足し、会長には前田が就任した。



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