福井県では、寺院跡・瓦窯跡・瓦出土地などの寺院関連遺跡として坂井郡で五遺跡(うち三廃寺)、足羽郡二遺跡(うち一廃寺)、丹生郡一一遺跡(うち四廃寺)、敦賀郡では一遺跡、三方郡一廃寺、遠敷郡四遺跡(うち三廃寺)が確認されており、これらはいずれも河川の流域に立地し、とくに丹生郡に集中していることが注目されよう。もっとも、これらのすべてを詳細に知ることは不可能であって、部分的な記述にとどまるが、かならずしも、瓦出土地が即古代寺院とはいえない。奈良期には一部邸宅や官衙などに瓦の使用があるので、あわせて考えるべきであろう。
また、古代寺院の規模についてもすべてが壮大な伽藍をもつとは限らず、『出雲国風土記』にみられる一一か寺のうちには、五重の塔あるいは三重の塔で層塔などを具備しながらも、僧侶は一〜五人、もしくは尼二人の記録しかないものもあり、塔とか厳堂とかに限られた堂塔のみの寺院の存在が知られる。
県内各地の出土瓦はバラエティに富んでおり、中央寺院、あるいは官衙系の影響もあって、伝播経路の複雑さをみせている。これらは高句麗・百済系統のほか、山田寺・川原寺・紀寺系統など中央の有力氏族と関連すると考えられるものもあるが、たとえば紀寺などは紀氏と関連づけることが疑問視されており、むしろ、官的な要素の強いものとの見方もされている(森前掲書)。 |