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 第七章 若越の文学と仏教
   第一節 郷土と文学
    一 文字の普及
      墨書土器
 地方における文字の普及を確実に示す資料として、墨書土器の存在がある。おそらくは官人の筆になるものであろうが、それにしても県内在住者の筆跡には違いないので、文字を書ける人間、文字を読める人間がすでに居住していたことは疑いない。県内各地ですでに四百点以上の墨書土器の出土をみているが、中には解読不能のものもあり、また遺跡の性格が明確になっていないところも多いので、その年代について確定しにくいものもあり、墨書がどのような目的で書かれたものかなど、解明しきれない点が多い。
 しかし文献の乏しい時代にあって、墨書土器は貴重な文字資料であって、その一字一字に先人の生活と労苦が刻みこまれていることは疑いない事実である。したがって、そこからできるだけ多くの意味を汲みとるよう努めなければならないであろう。
 



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