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 第四章 律令制下の若越
   第二節 人びとのくらしと税
    二 荷札木簡と税
      雑徭
 これまでが物を収取する税であったのに対し、これからみる雑徭以下は力役を徴発する税である。雑徭は国司・郡司の差配下に、正丁一人につき年間六〇日を限って、地方で力役に従事させたものである。『令集解』賦役令雑徭条所引の諸説によれば、次丁は正丁の半分、中男はさらにその半分の日数になるという。
 それでは一体どのような力役が雑徭にはあるのであろうか。残念ながらそれを若狭・越前で知ることのできる史料はない。『令集解』が引く、大宝令の注釈書である古記は、新たに池堤・倉庫・他界路橋を作る工事など多様な雑徭の用途をあげている。古記の注釈が実態を表わしているのかどうか議論の分かれる所であるが、各国で必要とする広範で多種多様な力役に、雑徭が充てられたことは確実であり、年間六〇日を限度とするという規定が、実際には限度いっぱいの賦課を必然化したから、農民にとってはたいへん重い負担であった。



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