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 第二章 若越地域の形成
   第三節 人びとの生産と生活
    二 人びとのくらし
      鉄器化する農具
 弥生時代の木製の鍬や鋤などの農具が、糞置遺跡(福井市)などで出土している。ところが、古墳時代になると短冊形の鉄板の両端を折り曲げた鍬先や鋤先が現われる。それは稲荷山古墳・竜ケ岡古墳・天神山七号墳(福井市)、吉野八幡神社古墳(松岡町)、王山三一号墳(鯖江市)などの四世紀中ごろから五世紀中ごろの古墳の副葬品として出土していることから明らかである(図36の1)。古墳時代になると、弥生時代からの湿地の水田耕作から、より固い耕地に移りその開墾や耕作に使用されて、増産に大きな効果をあげたのである。このころの中国や朝鮮半島では鍬先や鋤先に、より密着するU字形の鉄製の鍬先や鋤先が使用されており、短冊形の鉄板の両端を折り曲げただけの簡単な鍬先や鋤先は倭人の工夫によるものであった。
図36 古墳出土鉄製農具の推移

図36 古墳出土鉄製農具の推移

 しかし、五世紀後葉以降になると、寮五号墳(福井市)や小羽山四号墳(清水町)の出土品にみられるように(図36の2)、朝鮮半島にみられた効率のよいU字形の鍬先や鋤先が今までのものにとってかわって登場し、耕地の開墾や耕作に一段と威力を発揮したことがうかがえる。また、鎌も五世紀中ごろをさかいに、直刃鎌から曲刃鎌にかわる(図36の3)。
 すなわち、古墳時代になると弥生時代と違って農具が鉄器化するとともに、より改善されていったといえるのである。これが増産につながり、また社会に新しい変革を生み出していく契機となったのである。



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