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 第一章 原始時代の社会と文化
   第一節 ふるさとのあけぼの
     二 縄文人の足跡
      後期の遺跡
 今から約三〇〇〇年前のこの時期の遺跡は、中期後半の遺跡と重複する例が多いが、遺跡の数は確実に減少する。代表的な遺跡としては、右近次郎遺跡、鹿谷本郷遺跡・三室遺跡(勝山市)、舟津貝塚、浜島遺跡・曾万布遺跡・上河北遺跡(福井市)、今市遺跡(美浜町)、藤井遺跡・北寺遺跡(三方町)、阿納塩浜遺跡、立石遺跡などがある。
 後期の遺跡の調査例としては、鳴鹿手島遺跡がある(福井県埋文センター『鳴鹿手島遺跡』)。後期前葉を主体とし、竪穴式住居跡一基、土壙七三基、埋甕一基などの遺構も検出されている。そのほかに後期に属する住居跡の検出例としては、右近次郎遺跡・三室遺跡・阿納塩浜遺跡・立石遺跡でそれぞれ一基ずつが判明している。とくに、右近次郎遺跡のものは複式の炉が構築されている。阿納塩浜遺跡のものは、砂地に粘土の貼床で築かれ、一辺が五メートル前後の方形で、四本柱の中央に敷石炉のある例である。
写真17 曾万布遺跡出土の縄文土器

写真17 曾万布遺跡出土の縄文土器

 この時期の遺跡は中期同様かなりの発掘調査例があり、多彩な遺物が出土している。上河北遺跡では石製状耳飾、土製の耳栓といった装飾品が、曾万布遺跡や藤井遺跡では石棒が報告されている。藤井遺跡では四点の石棒が出土して、祭祀具としての石器の存在が判明している。後期末の時期に属する遺跡としては、鹿谷本郷遺跡・今市遺跡がある。今市遺跡は表面採集の資料であるが、近畿地方の宮滝式併行の遺跡である。中・後期の遺跡では、磨製石斧・打製石斧・石錘・磨石・石皿などの石器類が多数出土し、採集活動が盛んであったことを物語る。石錘は後期の段階では、すりきった切り目石錘が検出されているのが特徴である。



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