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 第一章 原始時代の社会と文化
   第一節 ふるさとのあけぼの
     二 縄文人の足跡
      前期の遺跡
 わが国の縄文文化が本格的に定着する時期で、その年代はおよそ六五〇〇〜五〇〇〇年前である。六〇〇〇年ほど前になると、スダジイ・アカガシ・モチノキなどの照葉樹(暖温帯常緑広葉樹)の森が広がっていたという。またスギの林も進出していた。この時期は温暖化がピークを迎えるようだ。縄文人のタイムカプセルとよばれる鳥浜貝塚が、福井県のこの時期の代表的な遺跡である。そのほかに北堀貝塚・深坂小縄遺跡・三十八社遺跡(福井市)、田井野貝塚(三方町)、阿納尻遺跡(小浜市)、岩の鼻遺跡、寺内川遺跡・青法遺跡(大飯町)など遺跡の数はかなりの増加がみられる。とりわけ三十八社遺跡では、前期の多彩な土器が発見され、各地の縄文文化が福井県に波及していること、ひいては各地との交易が展開したことを物語る。近畿系の北白川下層式、瀬戸内系の羽島下層式、東海系の清水ノ上式、中部・関東系の諸磯a式などとよばれる形式の土器が判明している。このなかでは、とくに近畿系の北白川下層式土器が主体であり、これは前述の深坂小縄遺跡でも同様の傾向がみられる。この前期の遺跡をめぐる問題については、三項の「低湿地遺跡」や四項で詳しく述べることにする。



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