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通史編序説
  産業・交通と都市
    一 産業・特産物
      織物業
 戦国時代に北庄の橘屋は、絹織物販売の軽物座の特権が与えられたことがみえる。近世には福井に紬の産出があった。絹織物は明治の中期より大正期にかけて飛躍的な発展を遂げる。すなわち、羽二重製織業が明治二十年代中ころより増加し、日露戦争後の好況、さらに第一次大戦の勃発によって大躍進をもたらした。アメリカの戦後景気により羽二重輸出が増大した結果でもある。しかし、昭和初年不況によって絹織物輸出が不振となって、代わって人絹織物がおこった。昭和十二年、日華事変勃発後は人絹織物が漸次不振に傾いたが、第二次大戦後に人絹織物輸出が一時東南アジア中心に急増した。しかしやがて、不況のため漸減の方向であったのに対して、合繊織物が進出して人絹織物の生産を凌駕し、全国一の産地となった。昭和三十年代の末から合繊は過剰の生産機構ともなって、対米輸出の制限問題などをもみることになった。



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