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通史編序説
  政治・社会
    一 政治の推移
      幕末維新時の動き
 藩政改革・経済政策に成果をあげた例として、福井藩・大野藩をみよう。松平慶永が田安家より入って福井藩主となり、藩財政改革のため種々の方法を試みたが、容易には成功しなかった。しかし安政六年(一八五九)には物産総会所を創設し、生糸・布・木綿・茶・藁工品などの物産を取扱いこれを各地に移出販売し、とくに長崎を通して生糸などを海外に輸出して、殖産興業上に好成果をおさめた。慶永は親藩の立場からも幕政改革に心を寄せたが、安政五年隠居謹慎を命ぜられて挫折した。しかし、やがて政事総裁職に起用され、旧藩主の立場で藩政の指導にあたるとともに、公武合体運動の中心として幕末政局に重要な役割を果たした。
 大野藩主七代土井利忠は、内山良休・隆佐兄弟を登用して天保年間以来藩政改革に着手し、安政二年以降、各地に藩直営の大野屋を開設して領内物産の振興と領外移出販売に成果をあげた。また安政五年洋風帆船「大野丸」を造船し、敦賀・北海道・樺太間の交易品輸送にあたらせた。



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