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 第六章 「地方の時代」の諸問題
  第二節 諸産業の展開
    四 石油危機下の工業と減量経営
      伝統産業の振興
 ところで、以上みてきたような各種製造業の動きとは別に、一九七〇年代には伝統工芸品産業に対する保護育成措置がとられた。一九七四年(昭和四九)五月に「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」(伝産法)が公布施行され、伝統工芸品産地の協同組合等が通産大臣より産地指定をうけ、その策定する産地振興計画にもとづき実施される事業について、国・自治体より補助金の支出、融資あっせん、税制上の措置をうけることが可能になった(『通商産業政策史』15)。福井県では、越前漆器(七五年)、若狭めのう(七六年)、越前和紙(七六年)、若狭塗(七八年)、越前打刃物(七九年)、越前焼(八六年)の五業種六産地があいついで産地指定をうけた。
 こうした伝統産業は、いずれも零細企業が多く就業者の高齢化が進み、とりわけ後継者の確保に大きな困難を抱えていた。また和紙では機械すき、漆器ではプラスチック地といった量産品が過半を占めるとともに、七〇年代に入ると量産品分野における外国製品の参入が進み、全体として市場競争力の低下が著しくなった。伝産法は、こうした産地の市場競争力の向上により、伝統工芸品産地の回復をねらったものであり、共同仕入・共同加工設備の導入によるコスト・ダウン、製品開発・デザイン開発や広告宣伝活動による新需要の開拓などに政策的な支援をあたえるものであった。こうした事業では、とくに和紙の里会館やパピルス館、陶芸村などのような観光事業とタイアップしたPR事業では目覚しい成果をあげており注目されるものの、販売実績の拡大には十分につながっておらず、依然として伝統産業の抱える問題は解消されていないのが実状である。



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