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 第四章 高度産業社会への胎動
   第二節 地域振興と県民生活
    一 産業振興と水資源開発
      真名川総合開発事業の着手
 一九五一年(昭和二六)六月に建設省に提出され、五二年一月に調査地域指定をうけた九頭竜川総合開発計画の中核は、発電、治山治水、農業水利などの多目的ダム建設を基本とする真名川総合開発事業であった。同事業は、調査費八〇〇万円が五二年度特別会計予算に計上され、五二年四月、県庁内に九頭竜川総合開発本部、大野郡西谷村中島に真名川総合開発調査事務所を設置した。その後ただちに、建設省建設技術研究所に計画測量・設計を委託する一方、四月下旬には知事、県議会総務・総合開発の両常任委員長が現地で水没予定地住民との懇談会を開催し、住民の移住候補地として大野郡木の本原開拓地の調査に着手した。その後、数次にわたる地質調査および技術的検討を経て、一二月、県営電気事業の許可申請書が通産大臣に提出された。また、事業実施にあたり、当時、全国の水資源開発をめぐる各省庁の事業開拓競争が展開するなかで、同事業も農林省直轄工事、もしくは建設省補助工事の二方向で模索されたが、建設省河川局長と小幡知事がかつて栃木県の土木部長と警察部長として旧知の間柄であったこともあり、この事業計画は建設省ペースで進んだ。五三年度新規事業費獲得をめざして奔走した結果、工事期間三か年、総工事費約四〇億円を予定して着工をみることとなった。五三年五月、あらたに真名川開発建設事務所を開設し、八月には所長に井上清太郎(元関東地方建設局長)を迎えた。同事務所ではただちに工事全体計画書の再検討に着手し、翌五四年一〇月、あらためて全体計画の認可申請を行った。
写真73 県営中島発電所

写真73 県営中島発電所

 この事業計画は、真名川上流に笹生川ダム(基礎岩盤上七六メートル、総貯水容量五五二九万六〇〇〇立方メートル、重力式)、および雲川ダム(同三九メートル、同一四九万立方メートル、アーチ式)の建設を前提として、治水、潅漑、発電の各事業を行うものであった。すなわち、(1)治水事業については、両ダムが砂防ダムの役目を果たし下流部の被害の防止に寄与するとともに、笹生川ダムでは毎秒三三〇立方メートルの洪水を調節して、下流の水害および治水工事を軽減する、(2)真名川沿岸地区二〇四七町歩に対し渇水期に用水補給し、また九頭竜川下流沿岸地区の湿田一万五四二町歩の乾田化事業にともなう潅漑用水の不足を補うために、最大毎秒一七立方メートル、総補給量三三〇〇万立方メートルの放流を行う、(3)両ダムをサイフォン式の約五キロメートルの隧道でつなぎ、これを導水路として県営中島発電所で最大一万八〇〇〇キロワットの発電を行うとともに、発電に利用した水を下流に放流することで、下流の五条方(北陸電力)・市荒川(関西電力)の両発電所の出力補給を行う、という計画のもとに本事業は着手されたのである(『真名川総合開発』)。



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