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 第四章 高度産業社会への胎動
   第一節 県政と行財政整備
    三 町村合併の促進
      シャウプ勧告と町村合併への動き
 戦後、地方自治体の財政は急激なインフレにより経費が膨張し、極度に窮迫した状況にあった。一九四九年(昭和二四)五月、シャウプ使節団が来日し、税制について実情の調査と検討を進め、八月二七日に第一次勧告を発表した。この勧告は、政府、都道府県、市町村の三段階の行政機関の事務を明確に区分し、能率的に配分することと、とくに市町村に第一の優先権をあたえることを強調していた。地方分権を進めることで地方自治の実現をめざしたものである。
 勧告をうけて、政府は一二月二六日に地方行政調査委員会議を設置した。この会議は神戸正雄委員長のもとで、約一年間の調査研究を行い、五〇年一二月二二日に行政事務配分に関する一次勧告、いわゆる「神戸勧告」を発表した。この勧告はシャウプ勧告の原則にしたがって、地方公共団体の事務は原則として市町村に配分することとして、さらに規模の著しく小さい町村については、人口七、八〇〇〇人程度を標準として規模の合理化が必要であると主張していた(『地方自治百年史』)。政府は、五一年一月一三日に各都道府県知事に「地方行政調査委員会議の行政再配分の勧告に関する件」の通知を出し、市町村の規模を適正合理化し、地方公共団体の財政的基盤を強化するよう促した。政府は勧告のなかの市町村規模の合理化をとくに重要な課題と位置づけ、これ以後町村合併を強力に推進していく。
写真69 「福井県庁だより」

写真69 「福井県庁だより」

 福井県では、五〇年一月二六日に、県総務部長が各地方事務所長へ「市町村の配置分合について」の通達を出し、インフレと財源の枯渇のため、地方自治体の財政は悪化しており、町村合併の気運が動きつつあることは喜ばしいとして、合併についての方針を示した。それは、(1)自治体の自主性を尊重し、県は高圧的印象をあたえないように留意する、(2)住民負担の軽減をのみ考慮して近接町村がいたずらに都市に統合されることに偏向せず、できるかぎり貧弱町村間の統合をはかる、(3)現行新制中学校組合を組織する町村をもって配置分合の一基準とする、(4)人口一万人の町村を目標とし、五〇〇〇人未満の町村は統合を行う、という内容であった。
 五〇年九月二八日に県総務部長は各市町村長へ「自治確立運動と町村規模の合理化について」の通知を出し、現行町村規模の拡大強化を訴えた。そのさい、四八年の市平均人口は全国が一二万二一一人、福井県が四万八一二八人で、町村平均人口は全国が五一三人、福井県が三五〇七人であるとして、合併の必要性を強調した(資12下 七九)。五一年一月二二日、県総務部長は、各市町村長、市町村議会議長へ「行政事務の再配分及び行政規模の合理化に関する件」の通知を出し、地方行政調査委員会議の勧告が現行町村を人口七、八〇〇〇人を標準として統合することを求めていると指摘し、町村規模の合理化を指示した。



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