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 第三章 占領と戦後改革
   第二節 政治・行政の民主化
    二 地方行財政機構の改編
      戦後初期の歳出構造
 行政事務の拡大は、諸施設の整備を不可避とするとともに、地方公務員数の増大とインフレの進行を背景とする大幅な人件費の上昇により、歳出の急増を招いた。また戦災、震災をはじめとするさまざまな災害復旧土木事業も歳出を膨張させる大きな要因となった。表69(表69 県・市町村の歳出(1935、47〜50年度))より県および市町村の歳出構造をみよう。
 県の歳出の場合、一九四八年(昭和二三)の震水災による特殊事情を配慮する必要があるが、支出費目構成の変化をみてみると、県庁費、社会および労働施設費の割合が大幅にふえており、保健衛生費についても漸増傾向にあることがわかる。これは、戦後の民生および一般行政事務の拡大と人件費の上昇を如実に示している。教育費については、四七年の新教育制度の発足と人件費の上昇による比率の上昇がめだつが、その後戦前と同程度の比重になっている。土木費、産業経済費は、敗戦直後には相対的に伸びは少ないが、震水災にともなう災害復旧事業を契機として急速な伸びを示しており、五〇年代以降の公共土木事業の盛行を予兆している。これに対して警察消防費は新警察制度の成立により、また公債費はインフレによる減価により大きく比率を下げている。ただし震水災以降、県の起債は急速に増加し、公債費はのちに財政逼迫の一因となる。
 市町村についてもほぼ同様のことがいえるが、とりわけ社会および労働施設費の増大がめだつ。これは復員者や遺家族の援護、生活保護、児童福祉事業にかかわる支出が急増したからである。また教育費は戦前の市町村財政の支出費目の首位にあったが、相対的には比率を下げたものの、義務教育の延長、新制中学設立にともなう支出の増加が著しく、市町村にとってはこれが依然として最大の財政上の懸案となっていた。
 表70は、市、町、村、それぞれについて歳出を集計し、各費目の構成をみたものである。まず、いずれも教育費が最大支出費目となっているが、とくに村ではその比率が高い。また村では、市・町に比べて議会費・役場費および産業経済費の比率が高いが、前者は村財政における行政経費の相対的な比重の高さを示すとともに、後者は供出に関連する勧業的な支出を反映していると思われる。一方、市や町といった相対的に規模の大きな自治体では警察消防費の比率が一割をこえ、自治体警察費の大きさを示している。また社会および労働施設費についても市・町では村に比べて比重が高い。なお、市財政における土木費の比重の高さは、戦災および震災にともなう福井・敦賀両市の復興事業や都市計画事業に起因するところが大きいと考えられるだろう。

表70 市町村の歳出構成(1949、50年度)
表70 市町村の歳出構成(1949、50年度)



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