東大寺領荘園の成立過程や具体的な経営の様相は、第一節でみてきた。そこでこの節では、人間に焦点をあて、現地で荘園経営に携わった人びとと中央、すなわち中央政府や造東大寺司との交流・関係をみることによって、東大寺の荘園経営の特質を探ることにしたい。荘園経営が特定の人によって担われる以上、その人の経歴・行動そして中央との関係などをみていけば、荘園経営の特徴が浮かび出てくると考えられるからである。具体的には、越前国足羽郡大領であり坂井郡桑原荘や足羽郡道守荘の経営に参画した生江臣東人と、越前国史生で東人とともに桑原荘経営に関与した安都宿 雄足の二人を取り上げることにする。