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 第六章 「地方の時代」の諸問題
  第一節 地域開発施策の展開
    五 合併後の市町村行政
      過疎対策の成果と問題点
 表161(表161 過疎指定町村の人口・世帯増加率)によれば、過疎地域の人口の減少率は、全国・福井県ともに一九六五年(昭和四〇)から七〇年をピークとして鈍化していった。減少率が鈍化した七〇年代前半は、七一年のニクソンショック、七三年の第一次石油危機などで高度経済成長が終焉を迎えた時期であった。高度経済成長のもとで、都市部での労働力需要は拡大を続け、地方から労働力を吸収してきたが、七〇年代の低成長時代には企業が人員の削減に積極的に取り組むようになったため、地方から都市部への人口移動が減少したと考えられる。
 過疎対策の結果、全国的に市町村道の改良舗装、小・中学校の統合が進み、高校・大学進学率、幼児教育経験者(幼稚園か保育園)比率、水道の普及率が上昇し、全国平均との差が縮まった(『過疎対策二〇年の歩み』)。
 八三年三月末現在で福井県の過疎地域と全国の過疎地域を比較してみると、市町村道の改良率は全国が二六・一%、福井県が四七・六%、舗装率は全国が三六・三%、福井県が六〇・三%と全国平均を上回る。さらに農道・林道の整備、幼稚園や保育園の収容率、小・中学校の危険校舎面積比率なども全国水準以上の実績をあげ、水道の普及率は全国が七五・五%、福井県が八〇・七%であり、これも平均を上回った。
 しかし、自治体の財政力指数は、八〇年から八二年の平均で福井県の過疎地域が〇・一七で全国の過疎地域の〇・二〇、福井県全体の〇・四七と比べて低く、格差はほとんど縮まっておらず、過疎町村の財政力の脆弱な状況が続いている。また産業については、八〇年の農家一戸あたり生産農業所得、製造品一人あたり出荷額、七九年の商業販売額一人あたり販売額ではすべて全国過疎地域の水準よりも低く、その差は以前よりも拡大した。経済活動の面では福井県の過疎地域は以前と比べてもよりきびしい状況であった(福井県『過疎地域振興方針』一九八四年)。
 福井県では、ここに取り上げた過疎地域の指定をうけた町村以外にも、過疎問題を抱えている町村は多い。過疎の地域では、都市部よりも人口の高齢化の進行が早く、地域社会の維持に必要な住民の負担はしだいに増大しており、将来はより深刻な状況に陥ることが予想される。そして、その根本的対策は今後の課題として残されている。



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