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 第七章 若越の文学と仏教
   第一節 郷土と文学
    四 説話文学
      説話文学と若狭・越前国
 ほかの多くの文学と同様、古代の若狭・越前に在住した人びとによって書かれた説話文学はみられない。しかし若狭・越前在住の人を主題とし、あるいは若狭・越前を舞台とした説話文学はかなり多く存在している。それらのなかには、若狭・越前の住人、もしくはこの地に赴任したことのある人から直接取材したものもあるであろうし、この地に伝わる口碑伝説の類が波及していって、説話作者の耳目にふれたものもあったであろう。いずれにしても、そこには古代の若狭・越前に住んだ人びとの生活がいく分なりとも反映していると考えられる。古代の庶民の生活を知ることは、資料的に非常に困難なことであるので、たとえ間接的でかつ若干正確さを欠いているにしても、これらの説話文学をとり上げないわけにはいかないのである。
 



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