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 第四章 律令制下の若越
   第四節 開発と土地管理
    三 条里プランと福井平野の土地開発
      福井平野の条里地割分布
 福井平野に位置する坂井・足羽・丹生郡の条里地割の分布は、いずれも三大河川が谷口から下流に向かって形成する扇状地・自然堤防帯・三角州のうちの、とくに自然堤防帯の後背湿地に広範にみられる。さらに、その後背湿地のなかでもそれほど低湿でない部分には、比較的明瞭な条里地割が分布している。最も顕著にみられるのは丹生郡で、広範囲かつ連続した条里地割を確認できる。それが足羽郡・坂井郡と北へ進むに従って条里地割の連続性は低下し、部分的・断片的にしか遺存しない傾向となる。しかし、一町間隔の大字・小字界、道・川などの延長においては相互にかなり整合するので、同一基準のもとで施工された一連の条里地割と考えられる。
 各郡の分布状況の概要は以下のとおりである(村名は明治二十二年の市制町村制施行時の旧村名)。坂井郡では東半部にみられる。そのなかで比較的まとまって分布している地域は、竹田川・田島川・五味川の自然堤防に囲まれた長畝・高椋・東十郷の三つの旧村が接する付近である。もう一つが、十郷用水幹線水路の左岸で、ほぼ流路に沿って北から東十郷・高椋・磯部・森田の各村が連続する地域である。足羽郡では、東部の山麓付近から足羽川・荒川の自然堤防に囲まれた岡保村から和田村にかけての地域である。また、足羽川左岸の自然堤防に隔てられた六条・下文殊・上文殊・東郷村にかけての広範な地域にも典型的な分布がみられる。丹生郡では、日野川と他の中小河川の流路付近を除いてほぼ全域にみられる。
 丹生郡の条里地割の分布においては、大勢として条里地割の方位は南北線が北約一度西の傾きを示すが、これとは異なった方位を示す地割群がいくつかみられることは特筆すべきであろう。中野・橋立・舟枝(中河村)では北約九〜一〇度西、鞍谷川以西の川島(北中山村)では北約四度西、野岡・山室(南中山村)では北約四度東、気比庄・西田中(朝日村)の和田川以西では北約五〜六度西の各地割群がみられる。



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