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 第四章 律令制下の若越
   第二節 人びとのくらしと税
    二 荷札木簡と税
      越前の中男作物
 平城京二条大路上に掘られた溝状遺構からは越前の中男作物木簡も一点出土している。それは次のようなものである。
 ・「<少名郷呉桃子三斗」
 ・「< 中男     」(木補六〇)
 この中男とは中男作物のことであろう。少名郷は足羽郡に属する郷であるが、具体的な位置は不明である。呉桃子はクルミである。『延喜式』主計上にも、越前の中男作物として呉桃子がみえる。『延喜式』ではそのほかに、紙・熟麻・麻・紅花・茜・黄檗皮・黒葛・漆・胡麻油・荏油・并油・山薑・海藻・雑魚と、多種多様な品目をあげている。さらに初め越前に属した加賀・能登両国も含めると、ほかに席・韓薦・折薦・菅薦・鯖が加わる。こうした品々が中男の集団的労働によって、調達されたのであった。



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