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通史編序説
   自然と風土
    一 越山若水
      嶺南の地形
 琵琶湖北部に野坂山地があり、西方滋賀県境に湖北山地が連なり、京都府丹後境に若丹山地がある。敦賀市の滋賀県境には、七里半越え・新道野越えなど琵琶湖上に出て京畿と結ぶ要路が通じている。野坂山地の北は漸次に低く関峠となって若狭との間に通路を開いた。若狭は南方に湖北山地を背にして、北側の海岸線はリアス式海岸の相を呈し、その間に若狭湾に流入する小河川が狭小なる平野を形成する。中部南方には南川・北川の間に介在する山地において渓谷多く、中世以来貴族・寺社などの荘園が多く設立されている。これらの渓流に沿って滋賀県・京都府丹後に通ずる山路がみられる。滋賀県境より流れ出る北川の中流以下には帯状の沃野が開けて、早くここに国府が置かれた。その下流は、名田庄村の西方京都府境を源とする南川の下流とともに小浜平野を形成する。
写真1 若狭の海と三方五湖

写真1 若狭の海と三方五湖

 若狭の東部、湖北山地から北流する耳川の流域と南北に走る三方断層の線に沿って流れる川の流域に、狭小な沖積平野がある。その三方断層の陥没した部分に湛水した三方五湖がある。若狭湾は越前岬より京都府与謝半島突端に至る陥没湾で、東から敦賀湾・敦賀半島・常神半島・小浜湾・大島半島・高浜湾などの岬角湾入がつづく。若狭湾の外海を北上してきた対馬暖流は越前岬に衝突し、本流は北東に向かい進むが、一部は南下して若狭湾を回流する。また晩秋より冬にかけては低温の海流が潜流となって南下する。これらのことから魚群の回遊が多い。
 越山若水、越前の山なみはすぐれて目だち、若狭の海岸はうるわしく特色をもつ。

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