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第七章 世紀転換期を迎える福井県
  国際化の時代
 日本の国際社会に占める地位が急速に拡大し日本全体が国際化の波にさらされるなかで、福井県民も海外の人びとと交流する機会が急速にふえている。
 まず、円高の進行により、県民の海外への渡航機会が急増した。福井県の年次別旅券発行件数をみると、一九七八年(昭和五三)に一万件、八五年に一万五〇〇〇件であったのが、九〇年(平成二)には三万件近くと五年間でほぼ倍増しており、旅券申請のさいのおもな渡航先は、アメリカ、アジア諸国が多くを占めている。また企業の海外進出も著しく、福井商工会議所経済情報センターが九五年四月現在でまとめた資料によれば、合弁会社・現地法人の設立、資本参加、事務所・支店の設置、技術・業務提携、委託生産など、県内企業の海外進出件数は、アジアが一五一件(うち中国四七件、韓国二七件、香港二〇件、タイ一八件)、欧米その他が七四件(うちアメリカ三一件)で、計二二五件となっており、その大部分は八五年以降の進出である。
 一方、県内の外国人登録者数も、労働力不足が顕著になった八〇年代末から急速にふえはじめ、八五年末に五三八二人、八八年末に五四七六人であった登録者数が、九一年末には六五八五人、九四年末には八四〇七人となっている。とくに九〇年六月の「出入国管理及び難民認定法」(入管法)の改正による就労範囲の整備により不熟練労働分野への外国人の受入れ拒否が明確になると、就労制限のない「日本人の配偶者等」または「定住者」としての在留資格があたえられる日系人労働者への求人が殺到した。福井県においても、九四年末の外国人登録者のうち、五四・八%が「特別永住者」を中心とする韓国・朝鮮国籍であるが、ついでブラジル国籍が二〇・八%を占めている。公共職業安定所による外国人雇用状況報告のまとめによれば、九四年六月現在で、一四四社で五三九人の外国人を雇用しており、うち日系人は四〇五人を占めていた。またこれらの会社では雇用関係のない就労外国人を四三五人抱えているが、これは研修生として就労している者と思われる。ところで、九一年五月、県内の在日韓国人李鎮哲(イ・ジンチョル)ら四人により、地方自治体の選挙権を求めて福井地方裁判所に対し、国および在住市町の選挙管理委員会を相手に選挙人名簿未登録の違法確認と損害賠償を求める訴訟が提起された。これは九四年一〇月の地裁判決で原告の請求が却下され、現在上級審で審議されているが、他方、九五年二月に最高裁が、定住外国人などに地方選挙権を法律で付与することは憲法上禁止されていないとの判断を行ったことから、今後の推移が注目される。
 このような国際化の流れのなかで、県や市町村の国際交流も活発に行われている。県では、外国語指導助手の配置(七〇年度開始)、ソ連、北・西欧諸国へ青年を派遣する「国際青年の船」(七一年度開始)、「国際婦人の船」(七六年度開始)など、早くから学校教育における国際理解・語学教育の推進や国際交流推進の中核となる人材の育成をはかってきたが、八六年には国際交流センターが福井市に開設され、本格的な国際交流事業の推進がはじまった。八九年には財団法人「福井県国際交流協会」が発足し、国際理解・研修事業や支援・育成事業の推進を担い、九三年には敦賀市に国際交流嶺南センターが開設された。国際姉妹友好提携も急速に展開しており、福井県は九〇年にアメリカ・ニュージャージー州と、また九三年に中国・浙江省と友好提携を締結した。市町では、七七年の小浜市と韓国・慶州市との友好提携を嚆矢として、九五年三月現在で七市町が一〇件の友好提携を結んでいる。このほか学校関係や民間団体の提携も多く、アメリカ一七件、中国一七件、韓国一五件をはじめとして県内では総計七二件の友好提携が締結されている。現在、九六年度オープンをめざして「福井県国際交流会館」の建設が進んでおり、地域の国際化の拡大発展の拠点として、その役割がおおいに期待されている。



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