第2回 館蔵資料紹介展示
福井県文書館の所蔵資料群では家文書などの館蔵資料群が多数あります。これらの館蔵資料群はデジタルアーカイブ福井で公開されているものの、実物を目にする機会は限られています。そこで、文書館に寄贈・移管されている特定の館蔵資料群を不定期で紹介する展示を実施します。第2回となる今回は吉田郡永平寺町を出所とする吉野屋文書を展示します。
目次
- 吉野屋文書-吉田郡永平寺町-
- 松岡八町の構成と家数
- 現在の町並みと松岡藩城下町
- 松岡の状況と主要産業
- 伊丹からの酒造方秘伝書
- 火薬(塩硝・煙硝)の取引
- 吉野屋の屋敷図
- 巡見使の視察経路
- 巡見使に振る舞われた料理の献立
- 頼母子講
- 夜伽の風習
開催期間:2025年9月19日(金)~11月26日(水)9時~17時
場所:福井県文書館閲覧室(入館無料)
関連イベント:ゆるっトーク(ギャラリートーク)
日時:2025年10月4日(土)11:30~12:00(終了しました)
場所:文書館閲覧室
定員:申込先着20名
1. 吉野屋文書 ―吉田郡永平寺町―
吉野屋の所在する松岡町(現吉田郡永平寺町松岡)は、福井平野の東端に位置します。正保2年(1645)に勝山街道沿いの芝原郷上村(現芝原江上村)を3つに分けた室・椚(くぬぎ)・窪の3か村の地に松平昌勝を任じて、5万石の城下町となりました。当時の松岡町の主な特産は清酒・鋳物(いもの)・竹細工・窯業等です。享保6年(1721)に松岡藩領は福井藩領に編成され、松岡藩は廃藩となりました。
吉野屋は両替商・酒造業などを営む松岡の大商人であり、近代以降は松岡町内の極印町の町会議員も務めました。両替商業務の証文類が多数あり、廻国に際しての巡検使に関する資料や、婚礼や出産に関する帳面類、講に関する資料等、総数約1500点あります。
2. 松岡八町の構成と家数
松岡八町は観音(かんのん)・極印(ごくいん)・本・台(岱(だい))・毘沙門の5町と、室・椚(くぬぎ)・窪の3村で構成されていました。元禄10年(1697)に書かれたこの資料によると、家数は359軒あったことがわかります。
3. 現在の町並みと松岡藩城下町
正徳3年(1713)の松岡藩城下町と現在の町並みを照合した地図です。吉野屋が所在していたのは、地図上の中央下にある極印町です。永平寺町役場生涯学習課の「現在の町並みと松岡藩城下町 十二曲り散策ご案内」より引用しています。
4. 松岡の状況と主要産業
天保9年(1838)の松岡の状況がわかる資料です。家数は355軒で町家が298軒、百姓家が57軒、人口は1511人でした。商工業の役は10職種(大工役・木挽役・油役・鋳物師役・紺屋役など)ありました。他に酒造人が11人おり、吉野屋もそのうちの1人でした。
5. 伊丹からの酒造方秘伝書
摂津国伊丹(現兵庫県)の酒造法の秘伝書です。松岡の地域振興策として、酒造業では藩公認の株が設けられ、保護されました。芝原用水を利用した精米用の水車が設置でき、地下水の水質が醸造用に適していたことが酒造業発展の要因でした。
6. 火薬(塩硝・煙硝)の取引
極印町の半七が塩硝(えんしょう)取引をする際の銀の借用書です。半七は通称「塩硝屋」と称し、藩の火薬を扱う玉薬奉行の命令によって、この地域の火薬取引を一手に担っていました。吉野屋から資金を借りて仕入れ、藩に塩硝を納入した後、藩から吉野屋へ支払いが行われていました。
7. 吉野屋の屋敷図
吉野屋の屋敷図です。南側の土地が南北15間(約27m)、東西が17.2間(31.1m)、北側の土地も含めると約千坪の敷地がありました。また、屋敷図に引かれている方角の線から、家相を意識していたことがうかがえます。
8. 巡検使の視察経路
延享3年(1746)に幕府から派遣された巡見使が松岡から金津までを視察したことや、道中の人足や馬にかかった費用が記されています。巡見使が松岡に宿泊するのは今回が初めてであり、宿泊する本陣は吉野屋に定められました。
9. 巡見使に振舞われた料理の献立
巡見使接待のために用意された朝夕の献立が記されています。巡見使一行の「御精進日」が通常の献立とは別に魚類を用いず、植物性の材料などで作られる精進料理も提供されていました。
10. 頼母子講(たのもしこう)
吉野屋が小寺・橋本の2人が講親を務める講に参加し、銀を納めたことが記されています。頼母子講とは参加者から集められた拠出金(拠出米)を元手に、参加者同士の救済や、運用をして利益を得ることを目的とした金融組織です。
11. 夜伽(よとぎ)の風習
松岡では、新生児は夜になると鬼にさらわれるという俗信がありました。そのため、産後6日間は近所の女性が交代で新生児を見張り、さらわれないように夜伽をしていました。産後7日目には関係者全員に御馳走が振舞われました。













