白川文字学の室

「白川文字学の室(へや)」について

「白川文字学の室(へや)」とは

福井県立図書館内に、本県出身の漢字・文字研究者で、文化勲章受章者である白川静博士の功績を称えるとともに漢字の歴史や成り立ちを学ぶ契機として、 「白川文字学の室」を開設しました。
今後とも、当室を通じて本県における漢字学習の普及および推進を図っていきます。

開設について

「白川文字学の室」は、平成17年4月23日(土)、福井県立図書館内に開設しました。
開設式の様子は→こちらへ

「白川文字学の室」の開設にあたって(白川博士からのメッセージ)
(平成17年4月23日(土)、開設式にて上映したビデオメッセージより)

 本日は、私の文字学の室を開設していただきまして、たいへんうれしく存じております。

 我が国の文字政策というものが、戦後に非常に改まりまして、国語力が低下しておる、 表現力が低下しておるというような批評が多くございますので、 本来の文字の知識というものを普及することによって、そういう文字学の知識というものを回復したい。 国語の表現力を回復したいというふうに考えております。
 まあ、できるならば、私の故郷であります福井を、ひとつの発信の地として、 我が国の国語力を向上させるという運動を展開したい。

 できますならば、漢字はアジアの諸民族が、かつては皆一様に用いておった文字でありますけれども、 今は、ばらばらの状態になっておる。 しかし、それが、それぞれの国の文化、それぞれの国の国語表現の方法として、 必ずしも最善であるとは思えませんので、 できるならば漢字の知識というものを、かつての東アジアの文字文化圏に回復して、 互いの友好を深めるということを実現していきたい。 こういうふうなことを念願しまして、 私は文字学の研究を進めてきたわけであります。

 何卒、この室の施設を市民の皆様、県民の皆様にも、親しんでいただきまして、 文字学についてのいろいろな問題をお考えいただく、 そういう機会を得ていただきたいと、こういうふうに考えております。

 本日の室を開く、そういう時にあたりまして、御挨拶申し上げます。

 


白川静博士紹介

プロフィール

白川静先生

明治43(1910)年、福井市生まれ。
順化尋常小学校を卒業後、大阪に出て、働きながら夜学に通う。
中学校教師を経て、立命館大学文学部教授となり、昭和56(1981)年に名誉教授の称号を受ける。
中国の古代文字である甲骨文や金文を分析。
従来の漢字解釈を覆し、中国の古代人の生活と意識にまで踏み込んだ「白川文字学」を確立した。
字書三部作「字統」「字訓」「字通」を完成させるなど精力的な研究活動を続け、平成16年に文化勲章を受章する。
なお、平成14年には福井県県民賞を受賞、平成17年には福井市名誉市民となる。
平成18年10月30日 逝去(享年96歳)。


 

白川文字学の特徴とは

さい(さい)の発見

「口」のつく漢字の中には、「くち」という意味だけでは字の成り立ちが説明できないものや、矛盾が生まれるものが数多くあります。
この問題に終止符を打ったのが、白川博士による さいの発見でした。

さいとは、祝詞(のりと・人が神に願い事をするために書いた文)を入れる器の形です。 白川博士が、古代の人々の暮らしをもとに さいを発見し、「口」の部分を、神にささげる祝詞を入れる器と読み解いたことにより、これまで疑問を持たれていた多くの漢字の成り立ちや文字系列が明らかになったのです。


古代文字(甲骨文字・金文)について

甲骨・甲骨文字

甲骨文字(亀甲獣骨文字)とは、亀の甲羅(腹甲)や牛および鹿の骨(肩胛骨)に刻まれた、中国における最古の文字で、漢字の最初の形です。
甲骨文字が生まれたのは、今から3,300年前の殷(商)王朝の頃といわれています。
殷の時代には、亀甲や獣骨に小さな穴を開け、熱した青銅製の棒を穴に差し込んでひび割れを作り、その形で吉凶を占いました。
この占いを「亀ト」または「ト」といい、占いのために刻み込んだ文字が甲骨文字です。
甲骨文字の数は5千字ありますが、解読されているのは2千字程度です。

青銅器・金文

金文とは、殷・周時代に作られた青銅器の内側に鋳込まれた文字のことで、「金」とは、銅あるいは青銅を表します。
硬い甲骨に刻み込んだ甲骨文字は、細くて直線的ですが、柔らかい粘土等の鋳型に刻み込んだ金文は、肉太で曲線的な文字です。
殷・周の人々は、官職に任命されたり、戦いに勝って王から褒美をいただいたりすると、そのことを青銅器に記録しました。
周代には、長い文章が記録されるようになり、500字に及ぶものもあります。
金文の数は4千字ありますが、解読されているのは2千字程度です。


 

室内のご案内

白川文字学の室案内図


(クリックすると大きく表示されます)

【開室時間】平日、土日・祝日9:00~17:00


その他の関連情報

関連図書のコーナー

  • 「白川文字学コーナー」(閲覧室内)

白川博士の著作および漢字・文字に関する関連図書を集めています。[一般資料コーナーの青(文学)棚1]
白川文字学の室内の図書・資料は閲覧用です。図書の 貸出・複写をご希望の方は、閲覧室内「白川文字学コーナー」を
ご利用ください。

白川静博士の著作、白川文字学関連の本のリスト(2021.7現在)

「白川静のことば」

「白川静のことば」とは、『絵で読む漢字のなりたち』の作者である金子都美絵さんが、白川静博士の著書に出てくることばから、お気に入りのものを引用して、影絵的なオリジナルのイラストにより、漢字一文字の成り立ちを独自に表現し、白川文字学の世界を紹介しているものです。 

「白川文字学の室」だけのオリジナル作品です。今後もシリーズでご紹介いただく予定です。
金子都美絵さんのオリジナルな絵で楽しむ「白川静のことば」は、「白川文字学の室」内にあり、ご自由にお持ち帰りいただけます。(無料)


DVD貸出のご案内

白川博士の講演会「文字講話」シリーズの DVD(全20巻)の貸出を行っています。(無料)

  • 貸出対象

教育的または文化的目的で使用する場合に、福井県内の団体を対象に貸出します。

  • 貸出期間

期限は1週間です。
貸出延長は、返却期限日当日までに申し出ていただければ、 1週間の延長ができます(1回のみ、1週間)。
予約も受け付けています(原則として先着順)。

  • 申込み方法

事前に白川文字学の室担当までご連絡ください
貸出の際に「館外利用申込書」にご記入いただきます。
返却時には、利用に関するアンケート用紙も一緒に提出してください。


展示パネル貸出のご案内

これまで展示した白川文字学の展示パネルを、学校、公民館等の団体向けに貸し出ししています。
また、展示パネルの貸出について、嶺南地区の団体は、若狭図書学習センターで受け取ることができます。
詳細は、白川文字学の室担当までお問い合わせください。

貸出パネルリスト【白川文字学の室】R5(pdf 153kb)


 

これまでの展示等

平成23年度以降、県内の小学校で白川文字学を取り入れた漢字学習を行っています。
県立図書館では、白川文字学に親しんでいただけるような企画を行っています。

(2022年度)白川文字学の室関連展示
(2021年度)白川文字学の室関連展示
(2020年度)白川静博士生誕110年記念展示
(2019年度)「発見!白川文字学」シリーズ
(平成30年度)「白川文字学入門」シリーズ
(平成29年度)「身近な漢字」シリーズ
(平成28年度) 白川文字学の室企画展示
(平成27年度)「漢字を楽しもう」シリーズ
(平成26年度)「漢字の魅力!」シリーズ
(平成25年度)「漢字がおもしろい!」シリーズ
(平成24年度)「漢字がわかる!」シリーズ

(平成23年度)「知りたい!白川文字学シリーズ」

(平成22年度)スポット展示

(平成21年度)スポット展示

特別展示
(平成19年度) 白川静先生没後1周年 白川文字学の室「漢字の世界に遊ぶ」 平成19年10月21日~11月18日
(平成18年度)「白川文字学の室」特別展示 白川静先生を偲ぶ平成19年2月1日~2月25日


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